厚生労働省は、「有期労働契約に関する実態調査」の結果を公表し、「無期転換ルール」(2013年4月施行の改正労働契約法により新設)の実態を初めて明らかにしました。調査は、昨年4月時点で5人以上を雇用している企業5,662事業所と、今年1月時点での労働者6,670人に対してそれぞれ行われたものです。
無期転換ルール・・・有期契約労働者の契約更新が通算5年を超えると無期契約を申し込める権利が発生する |
調査結果によると、有期契約労働者を雇用している事業所の割合は41.7%でした。そのうち、2018~2019年度に無期転換ルールによる無期転換を申し込む権利が生じ、その権利を行使した人の割合は27.8%、無期転換を申し込む権利を行使せず継続して雇用されている人の割合は65.5%でした。また、無期転換を申し込む権利を行使した人の割合を事業所の規模別にみると、1,000人以上の事業所が39.9%、300~999人の事業所が22.2%、100~299人の事業所が22.3%、30~99人の事業所が17.1%、5~29人の事業所が8.6%となりました。従業員数が多い事業所になるほど、無期転換の権利を行使する割合が高くなっています。
一方、有期契約労働者に対する調査では、無期転換の希望の有無について「希望する」と回答した人の割合が18.9%、「希望しない(有期労働契約を継続したい)」が22.6%、「わからない」が53.6%でした。無期転換を希望する理由は、「雇用不安がなくなるから」が最も高く、「長期的なキャリア形成の見通しや、将来的な生活設計が立てやすくなるから」、「その後の賃金・労働条件の改善が期待できるから」などが続いています。また、希望しない理由は、「高齢だから、定年後の再雇用者だから」が最も高く、次いで「現状に不満はないから」、「契約期間だけなくなっても意味がないから」となっています。
有期契約労働者が労働契約法における無期転換ルールに関して知っている内容(複数回答)について、問われた内容のどれか1つでも知っている人の割合は38.5%でした。知っている内容については、「契約社員やパート、アルバイト、再雇用者など呼称を問わず、すべての労働者に適用される」と回答した人は68.9%と最も高く、次いで「契約期間を通算して5年を超えても、労働者から「申込み」を行わなければ無期転換されない」が51.9%、「無期転換ル-ルが適用されるのは、2013年4月1日以降に開始(更新)された、有期労働契約である」が46.0%でした。一方、「無期転換ルールという名称は聞いたことがある」と回答した人は17.8%、「無期転換ルールについては何も知らない・聞いたことがない」が39.9%と、4割の人が制度そのものを知らないことがわかりました。
無期転換ルールが新設されて8年が経ちますが、制度について十分に認知されているとは言えないのが現状です。厚生労働省では3月から、無期転換ルールの見直しをテーマとする検討会が始まり、議論を重ねています。有期契約労働者と企業がお互いにルールの内容を理解し、ルールが適切に運用されることが望まれます。